第8章 全中で
~8.全中で~
今日から全中本戦が始まる。予選ではあたしはほとんど試合に出ることはなかったが、茉実たちは難なく予選を突破できるほどの実力をつけていた。そして今は開会式。
役員「続きまして優勝旗返還です。昨年度優勝校、東京都代表鈴城中学校」
『はい』
優勝旗を両手で抱え、ステージに登る。一歩一歩丁寧に。会長の前まで歩き、優勝旗を渡す。一旦返すだけ、この大会が終わる頃には再びあたしたちの手に収まってるはずだから。両手にかかる重みが消えたステージからの帰り道、ふと目が合った。昨年決勝戦で戦った相手、神奈川の強豪、桜蘭(おうらん)中学校2年生エース、白河美鈴。昨年の決勝戦であたしのマッチアップ相手だった。白河さんはあたしをキッと睨むと正面を向きなおした。あたしも視線を戻して前へ進んだ。
茉実「朱音、返還の時どこ見てたの?」
藍「私も気になった!深刻そうな顔してたし」
『あー、視線を感じて見てみたら白河さんがいてね』
優希「白河って…桜蘭の白河?」
凜子「あの人って最初から朱音のことライバル視してたもんねー」
捺美「朱音、大丈夫?」
『うん、大丈夫。けど今回は準々決勝で当たるんだよね』
雅「そっかー。負けられないね!それはそうと、今日はどうする?当分試合無いよね」
あたしたち鈴城中はシード校。つまり1回戦は無い。よって試合が始まるのは明後日から。
『時間がもったいないから練習するよ。藍、悪いけど藍はここに残って偵察よろしく。対戦相手になると思う相手と、目立った学校だけでいいから』
藍は了解と元気に言ってくれた。そしてあたしたちプレーヤーは体育館の外へ向かう。この体育館は都内でも1・2を争う巨大な体育館。そしてその隣には同じくらい大きい体育館がある。その体育館では同じように男子バスケの全中が行われていた。その中から白いジャージに身を包んだ見たことがあるカラフルな頭を持つ人たちを先頭に団体が歩いていた。そしてそのカラフル軍団がこちらに気付いた。
「「「「「「朱音(っち)(ちん)(さん)!」」」」」
相変わらず見事なハモリだなぁ、なんて思っている間に彼らはすぐそこまで来ていた。凄い速さである。そういえば彼らに会うのは文化祭以来か、と思った。直に予選が始まった上に、会場が被るということは無かった。