第7章 文化祭という名の…
『もういいよ。征ちゃんは征ちゃんの信念を貫いた。それだけのことでしょ?あたしは何も思ってないから』
ね?とほほ笑みかけると、暫く考えたあと、ああと短く答えてくれた。それからはいつものように雑談を始める。今日の試合の話、帝城祭の話。征ちゃんとゆっくり話すのは久しぶりのような気がする。
「そろそろ時間か。立てるか?」
『何かあるの?』
「僕たちは生徒会長だ。だから最後の仕事が残っている」
あたしには理解出来たが、どうしても体が言うことを聞かない。ここで聞いておくから征ちゃんだけ言ってほしいと頼むと、溜息をつかれ、あたしの体は征ちゃんの背中に回った。
『ちょ、征ちゃん!?』
「うるさい。黙って僕に背負われておけ」
有無を言わさない征ちゃんの言い方。人によっては不快に思う人もいるが、あたしはこの言い方は割と好きだったりする。
「朱音」
不意にあたしの名前を呼ぶ声が聞こえて、んー?と返事をすると、呼んでみただけだ、と可愛い答えが返ってくる。
『征ちゃんっていい匂いする。石鹸のいい匂い。ってあたしもしかして汗かいたまま!?ユニフォームのままだし!』
「耳元で騒ぐな。立花たちが着替えさせようとしたらしいが、体を動かす度に痛がっていたようだったからそのままにしておいたそうだ。それに朱音は汗臭くない。むしろ花の香りだする」
『…花?ありがと…?』
花って…良い匂いってことかな?征ちゃんに聞こうとしたけど、征ちゃんの体の体温が上がってきたことが分かり、聞くのをやめた。そして後夜祭を行っている校庭に着く。あたしが背負われてきたことに疑問を持つ人は意外に少なかった。征ちゃん曰く、あの時ほぼ全校生徒があの試合を見ていたらしい。そして帝城祭、最後の仕事をこなす。
「これにて第1回帝城祭を終了する」
長いような短いようなあっという間の二日間の帝城祭が終わった。