第7章 文化祭という名の…
「…やはり君は最高だよ。想定以上だ、朱音。そうでなくては…」
面白くないと征ちゃんは言った。残り2分。点差は8点。もう1秒も無駄には出来ない。今度は征ちゃんのOF。あたしは自分の頭の中にやるべきことが流れ込んでいた。そしてその通り行う。転ばなかった。そしてボールを奪う。そのままゴールへ。大ちゃんがDFをしてくるが、レッグスルーからのターンオーバー、そして最後にフェイクを入れゴールネットを揺らした。
そして残り12秒。残る点差は2点。集中力が極限に高まった状態では、周りがよく見える。茉実がフリーだ。パスをだすと決めてくれた。残り4秒。あたしと征ちゃんは再度対峙する。抜ける、そう思った時に足が崩れるのを感じた。そして同時に試合終了を付けるブザーが鳴る。
審判「タ、タイムアップ!81対81で、この試合、引き分け…!」
審判の声が静まり返った体育館に木霊する。そして数秒後、ギャラリーから溢れんばかりの歓声と拍手が鳴り響いた。
「「「「「朱音ーーーっ!」」」」」
皆があたしに向かって走ってくる。立ち上がろうとするが、思うように足に力が入らない。
茉実「朱音!やっぱり朱音は凄いよ!」
凜子「うん!うん!朱音…朱音ー!」
捺美「良かった、本当に良かったよ…!」
優希「朱音ありがとう、本当にありがとう…」
雅「うわーん!皆お疲れ様ぁ!」
藍「もう!朱音大好き!皆大好き!」
『皆…ありがとう!』
あたしたちは皆で泣きあった。ギャラリーの人たちからも温かい拍手と言葉を貰う。そして気付く。
『征ちゃん…』
あたしが発した言葉によって、茫然と立ち尽くしている征ちゃんとあたしの間に道が出来た。