第7章 文化祭という名の…
そう、問題は優希。優希のマッチアップの相手がいない。相手はいるが、今の優希じゃ何もできない。優希が弱いわけではなく、征ちゃんと大ちゃんが圧倒的すぎるんだ。
『ごめん、優希。優希にはあたしと一緒に征ちゃんと大ちゃんを止めてほしい。今言えるのはそれだけ』
優希「…分かりました」
優希の手が硬く握られた。悔しいんだ。誰よりも練習をしてきたはずなのに、今自分にはやるべきことがない。今、自分がチームに出来ることは何もないんだと。
『優希、優希の気持ちは分かる。優希が誰よりも頑張ってきたのも、強くなったのも。だけど今回は優希にとって相性が悪い。だからこの悔しさを、全中でぶつけろ!』
優希の胸に拳をドンと突き立てる。優希はハッとして、静かに強く頷いた。
インターバルの終了を告げるブザーが鳴り、あたしたちはコートにへと戻った。会場は盛り上がっている。ここまでハイレベルな試合だ。初めて見た人もそうでない人も、興奮するだろう。
「やっと来たね。テツヤの次は真太郎まで攻略してしまうとは。その様子では、次の相手は僕と大輝のようだね」
『何でもお見通しってわけね。けど予想以上に6人目(シックスマン)を破られた。違う?』
「どうやら勘違いをしていたようだ。朱音、僕は君を僕と同じレベルの人間だと思っていた。だが違う。君は僕の一歩前を歩いている。さすがの朱音でも、それは認めない。勝負だ、朱音」
いつもの優しい征ちゃんの面影が消えた。そしてゾクリと鳥肌が立った。
「この世は勝利が全てだ。勝者は全てが肯定され、敗者は全て否定される。僕は今まであらゆることで負けたことがないし、この先も無い。全てに勝つ僕は全て正しい。僕に逆らうやつは親でも殺す。それはもちろん朱音、君もだ」
征ちゃんの綺麗な色の両眼が、怪しく光った。