第7章 文化祭という名の…
テツ君に凜子を当てたのは成功だったようだ。あたしの説明をしっかりと理解して、テツ君のパスを次々にスティールしていく。その甲斐あってか、点差は徐々に縮まっていく。あたしの今のマッチアップは真ちゃん。身長的にも、真ちゃんのプレースタイル的にも相性が悪い。だけど真ちゃんのどこからでも入る3Pは脅威だ。
「どうやら赤司の悪い予感は当たったようだ。全く大したものなのだよ。だが、悪いが朱音では俺には勝てん。身長も30センチも違うのだよ」
『何か勘違いしてない?バスケは慎重でやるスポーツじゃないよ』
「…面白い。受けてたとう」
確かに真ちゃんの超高弾シュートは高くて届かない。なら打たせなければいい。真ちゃんにボールが渡ると、早速シュートモーションに入る。あたしは出来る限り詰め寄り、普通より何倍も速いタイミングで飛ぶ。真ちゃんはびっくりしたようだったが、問題ないと言った様子でシュートを打つ。それは指に掠ることも無く綺麗な弧を描いてリングに収まった。
「確かに高い。その跳躍力はたいしたものだ。だが早く飛べば追いつけるとでも思ったか?」
確かに真ちゃんの言うとおりだ。だが、あたしは何の策も無しにただ飛んでいる訳ではない。あとはタイミングだけだった。
それからは真ちゃんがボールを呼ぶ回数が増えた。なかなかタイミングが合わない。点差が開いていくばかりだ。もう時間も無い。これがこのQ最後のシュートだ。真ちゃんがシュートモーションを作る。あたしは集中してタイミングを待つ。…ここだ!と思った時、飛んだ。そして真ちゃんの放ったボールはゆらゆらと揺れながら放物線を描き、リングに当たってリング外に落ちた。会場が揺れる。
生徒「緑間のシュートが落ちた!?」
生徒「どうしたんだ?不調か?」
「まさか…!」
あたしはボールが触れた中指の指先を擦りながら、真ちゃんを見据えた。
『バスケは身長じゃないよ』
真ちゃんは中指で眼鏡を上に押し上げると、楽しそうに笑った。