第7章 文化祭という名の…
涼君のマッチアップをしていた凜子が自然とテツ君に着く。テツ君の技は今まで見たことも無ければ聞いたことも無い。正直、一番対処法が無い選手だ。とりあえずじっくり見て…あれ?見失った!慌ててテツ君を探すが、あたしは大事なことを忘れていた。テツ君に注意を向けすぎて大ちゃんへのマークが薄くなっていた。
大ちゃんの姿を見つけ、追いついた時にはもう遅かった。どこからか現れたテツ君によって、本来真ちゃんに向いていたパスが大ちゃんへ渡る。そしてそのままゴールへとダンクを決めた。
生徒「すげぇぇ!っていうか今何が起こった!?」
生徒「ボールがいきなり曲がった!?」
生徒「違うよ!今誰かがボールに触ったんだよ!…って一体誰が!?」
ギャラリーが盛り上がるが、あたしの視線は二人から外せなかった。あたしの目の前で、嬉しそうに拳を合わせる二人を。
「ボール、触ったぜ」
「二人でなら朱音さんも倒して見せます」
『…そう来なくっちゃ』
テツ君は影の薄さも利用したスティールも得意だった。思ったよりだけど易々と負けるわけにはいかない。あたしたちは必死に食らいついた。そして4点差を残して第1Qが終わった。今は2分間のインターバル。あたしを中心に円になる。
藍「皆、だいぶ動きがよくなったみたいだね。最初は心配したけど」
『だけどまだ足りない。キセキの皆だって、まだ実力を出し切ってない。だから、それまでに出来るだけ点を取る。今まで以上にスピードが大事。それと、捺美。今まで以上に高い人を相手にしてるんだから、もっと腰を落として。スクリーンが甘い。凜子は相手を見すぎ。悪いことじゃないけどやりすぎもよくない。茉実はもっと積極的にシュート打って。大丈夫、今日の茉実は調子いいから。それと優希。優希には悪いけど…』
優希「分かってる。私が赤司君を止められないから…」
優希は決して弱くない。征ちゃんが強すぎるのだ。それにまだ、何もしてない。ただ基本の動きをしているだけ。
『ごめん、優希。征ちゃんの攻略は後にするって決めてるの。征ちゃんには一番時間がかかる。最後に征ちゃんを止めたとしてもたった一人の攻略だけじゃ勝ち目はない』
優希「分かってる。私もどうにか頑張るから」
そして第2Qが始まった。