第1章 常夜の心
美月さんが味付けをした料理は、出汁の味が効いていて、優しい…あたたかい味だった。
「……味がする…」
それに驚いたのは、ここ数年ストレスからか馬鹿になった俺の味覚が正常に仕事をしたことだった。自炊や店屋物、お茶でさえ味がしなかった。最初は調味料をドバドバかけてやっと少しの塩味を感じる事が出来ていたが、ここ最近は味のしない食べ物を食べる気さえ起きなかったので食事をすべて兵糧丸やサプリメントで済ませていた。
「カカシくん?…もしかして、口に合わなかった?大丈夫?」
優し過ぎる美月さんは黙っている俺を見て心配そうにしている。怖い思いをしてもなお彼女は今日初めて会った俺に気遣いをしてくれるのは何故なのだろう。
「………えっ、いや、美味しいです…!すっごく…こんな美味しいナスの味噌汁初めて食べました」
久しぶりの美味しいと思える食事を前に考えても答えが出る気がしなかったのでとにかく食べることにした。空腹が満たされていくとともに、左胸の辺りがあたたかくなっていくのを感じた。
―――――――――――――
食事を終えて、美月さんが洗い物をしようと立ち上がるのを見て「手伝います」と言ったら「大丈夫だから座ってて?」と言われて仕方なくソファーに座った。なんとなく動く絵巻の映る箱("てれび"というらしい)をぼーっと眺めていると、動物や赤ちゃんの話題や流行りの食べ物など色々流れてきた。
「カカシくん、お風呂入ったら?さっき沸かしておいたよ」
美月さんはいつの間にか洗い物を終えて「カカシくん眠そうだね」と俺の隣に座った。
「…美月さん…?あれ、もうそんな時間経ってます…?」
ぼーっとして瞼が重く目を擦った。瞼を開けたくても、意思に反して瞼が降りてくる。
「寝ちゃう前に温まっておいで…?今日は休んで、また明日木ノ葉の里に戻る方法を調べよう?」
「…はい…」
着替えを渡されて風呂場へ促され、美月さんの後をついて行く。軽く風呂場の使い方を教えてくれた。大体の風呂の造りは木ノ葉と変わりないので問題なく使えるだろう。
「…すみません美月さん。お風呂まで頂いてしまって…」
「謝ることないよ。ゆっくり浸かって疲れをとってね」
じゃあと言って美月さんは居間に戻って言った。