第14章 About Her.
ハンジはよく笑う。
「リヴァーイ!この書類の締め切りさ、一週間くらい延ばしてくれない?雨天時の巨人の生態について興味深い結果が出たんだ!!これはもっと掘り下げるべきだと……」
「テメエ……。クソほど紙束が溜まってんだぞ。それを処理するのは誰だ。俺とエルヴィンだ。」
「わかってる!でもどうしても知りたいんだよ!も手伝ってくれるって言うしさ」
こうなりゃこいつは熱湯にぶち込まれようがモブリットに引きずられようが喚きやがる。勘弁してくれ。俺はもう四日寝てねえ。
ハンジはよく勘案する。
「ああ……君か。悪いけど、ここには紅茶もお茶請けもないよ。あるのはこの資金繰り表だけだ」
「そんなもん期待してねえよ。………あいつらからの街土産だ」
「あいつら…?土産?」
ハンジは不思議そうに、受けとった茶色い紙袋に手を突っ込む。
そこから桃色のメッセージカードを引きぬくと、勢いよく椅子にもたれかかった。おいおいおい、口元が緩みまくってるぞ。おかしな声が外に漏れたらどうする。
そして、、とうわごとのように吐いた後、くるしげだが幸福の色をたたえた隻眼で俺を捉えた。
「はは…。馬車馬のように働くよ」
そりゃ何よりだ、団長。
ハンジは夢想する。
誰よりも理想主義者で、実現のための努力を惜しまねえ。
その昔、聖人君主様のつもりか、と聞いたことがあるが、「君って面白いな!」と快活に返されて終わった。こいつに嫌味は通じないと悟った瞬間だった。