第14章 About Her.
はよく笑う。
「ミカサ!今日はスープにお肉が入ってるって!早く行かないと取り分減っちゃうよ」
はよく泣く。
「っ泣いて、ない」
「……これは何」
「赤血球の抜かれた、血」
「屁理屈」
「…………うぅう」
は物識り。
「あのね、雨の匂いはペトリコールって言って、土のなかにいる細菌が這い出てくるのが原因なんだよ!どうして雨上がりに巨人が活性化するのか、興味が湧いちゃった」
「そう」
時折はしゃいだようにうんちくを披露する。理由はわかっているから、私たち同期は顔を見あわせて笑うだけ。
は寂しがり。
王都へ向かうあの人の背中を、灼けつくような目で眺めていた。
「。気は済んだ?」
「………ん」
「……夜は冷える」
「あ、ミカサは部屋に戻った方がいいよ。ごめん、私もうすこし…」
たった三日。それなのに、は今生の別れの表情をしていた。吹けば飛ぶような儚さが恐ろしく、隣にいることにした。
このとき私に渦巻いた感情は。
たぶん、いつかおばさんが教えてくれた『いつくしみ』、だ。
翌朝の彼女は胡乱な目をして、立体機動装置の装着に手こずり、訓練兵時代のように私がベルトを留めてあげた。首に下げられた紫色の宝石を何度も撫でていた。