第12章 R18 ユリイカ【同棲現パロ】
こぼれおちた記憶は、夏の境界に落ちていく。
それでいい。いつかの二人が何者でも、こうして一緒にいられる日々を噛みしめるだけだ。
はドアノブに手をかけるハンジの手をやさしくつかみ、微笑んだ。
「…一緒にいてくれてありがとう。」
「……なんだよ、突然。そんなに私が好きなの?」
ハンジがニヤニヤと顔を向ける。
逆光が表情に影をおとして、とても綺麗だ。
「好きだよ。ハンジが大好き!」
溢れる感情をぶつけるように飛びついた。
傷ひとつない腕、きれいな両目、やわらかい髪。
……こんなにも満ちたりている。
ハンジは声をもらすと、の体を力強く抱き返した。
低い肩に顔をうずめ、深呼吸をひとつ落とす。
「私だって同じだよ。…ずっと、ずっと前からそうだ」
なにかを堪えるように響くその声は、の全身の血管をなぞり結ばれていく。
ありがとう、うれしい、あいしてる。
千切れることのない記憶を、今はまだ留めていて。
ふと顔をあげると、悲愴な顔をしたハンジが見えた。
なんだかおかしくなって二人で笑った。
そうだ、オムライスにしようよ、今日は。あーいいね。卵あったっけ。
ようやくふたりは寝室を出た。
また夜が更けて、やすらかな顔で共に眠る。