第9章 あなたとりんね 【転生現パロ】
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「……死にそうだ」
清潔な壁、乱雑な文字が躍るホワイトボード、白衣を着た生徒たちの生気のない顔。
変わり映えがなさすぎて辟易する。
私もいつも通り論文を読み漁り、書き留め、実験を繰り返す。笑ってしまうくらい変わらない。
抜け落ちた穴を埋めるにはどうすればいいのだろう。
前世の私は、絶えず湧き出る喪失感を、どう扱っていたんだったか。
ギッ、と古びた椅子が鳴る。
あの日から私はに会っていない。
盛大な勘違いをかまし、挙句抱きしめるなんて最高に気持ち悪い奴だろう。
……いや、本当はただ怖いんだ。
が愛想を尽かして__そんなものがあったのかもわからない__しまったら、私はこれからどう生きればいいのだろう。
私はこんなに憶病ではないはずだ。しかし彼女のこととなると、どうにも上手く自分を操れない。
「ハンジさん!
最近ちゃんと眠れてますか?クマが酷いです」
ニファにも心配される始末だ。
「うん…寝てるよ」
「もう、そんなんでとんでもない失敗したらどうするんですか!?安全な実験ばかりじゃないんですよ!」
兵服を着ているかのような口ぶりに、私はつい吹き出してしまう。
「ありがとう。でも本当に大丈夫なんだ。
……論文読んでたら夜が明けちゃってね。今日は早めに寝るよ」
「そうしてくださいね」
眼鏡を外し、凝り固まった眉間を揉む。
気分転換にコーヒーでも買いに行こうと、私は研究室を後にした。