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あかいいと。【ハンジ・ゾエ/進撃の巨人】

第1章 病めるときも、健やかなるときも 【分隊長×リヴァイ班夢主】


「一度だけでいいです。
お礼に研究の助手として、
私を使ってくださってかまいません。だから…」



少しの沈黙。
ハンジさんは瞳をすべらせ、綺麗な紅茶色が私を捉えた。



「うん、もちろん。
誓いの言葉?」



こんな突拍子もないお願いにも快く笑ってくれる。
そのやさしさが残酷で、悲しくて、愛おしい…。


私たちの声が重なる。


「…健やかなるときも、病める時も、
喜びのときも、悲しみのときも」


私の片手には箒、あごにはハンカチが引っかかっていて、ムードがないにも程がある。


「富めるときも、貧しいときも
これを愛し、これを敬い、これを救い」


私は目を閉じた。
呆気なく終わってしまう。
もうこんな気持ち、一生のどこでも味わえないのに。



「この命ある限り、
真心を尽くすことを 誓います。」



私はほとんど泣いていた。
幸せすぎて、この思い出だけで百年は生きていられると本気で信じた。



「!?どっ、どうしたの…
私となんて嫌だった?
それともどこか痛い?」


慌てて首を振り、口を開く。


「違うんです…えっと、うれしくって…」



息を呑む音が聞こえ、するりとハンジさんの手が瞼に触れた。
予想外の温もりに声を出すこともままならず、ゆっくりと腰を引き寄せられる。



「ハンジさ、んっ、」

啄むだけのバードキスをひとつ。
これは…現実?



「…ごめん」

ハンジさんは小さく呟き、
何事もなかったかのように立ち去った。



消えた方向を見つめ、脳が情報処理に励むものの徒労に終わる。



「…なん、で」



望みなんてない。
少し仲の良いただの部下。
私が死んだときには泣いてくれたら嬉しいな、とか。
そんなささやかな想い。


でも、でも、今が本当なら。


私はその場にへたり込み、わけも分からず涙をこぼすしかなかった。



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「遅ぇぞクソメガネ。どこで油売ってきた」

「…私も存外意気地なしみたいだ。
あのままを攫っていればよかった」

「唐突だな。
テメェの班から左遷でもするつもりか?」

「は?…あぁ、うん、なんでもないよ。
ごめんごめん」
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