第1章 病めるときも、健やかなるときも 【分隊長×リヴァイ班夢主】
「はー…帰ってきたぁ」
疲れた。慣れない靴で足が痛い。
今日は調整日。
故郷の友人であるフィルの結婚式に参列したのだ。
・ ・ ・ ・ ・
「おめでとう!とっても綺麗だよ、フィル」
「ありがとう…!
ねえ、はいい人いないの?
貴女結構人気があったのにもったいないわよ」
「あはは、調査兵にそんな余裕ないよ。
さ、みんな待ってる。行こう!」
質素なドレスを翻し、私は新婦の手を取った。
こうして見ると、腕のやわさが全然違う。
ふっくりした手、色づく頬、花で飾られた長い髪も。
すべて私にはないもの。
「どうしたの?」
いけない。いつの間にか呆けていたみたいだ。
「あ…ごめん!なんでもないよ」
仕方のないことなのに。
兵士を選んだのは自分でしょう。
・ ・ ・ ・ ・
考え込んで眠れない夜は決まって、ハンジ分隊長の元へ行く。
「ハンジさあん」
「おー、どしたの」
また何かの研究。
今度は鉱物?
暗い部屋で、ハンジさんの横顔を懸命に照らす蒼い塊。
見慣れないものだけれどすごく、
「綺麗…」
「そうだろ…!?もっと近くにおいでよ」
ハンジさんに手招かれ、私は猫のようにすり寄った。
「これ見て。
ギラギラ輝いて目が眩むくらいだ。光源の正体はまだわからないんだけどね。
反射ってわけでもないみたいだし…。
コランダム系の宝石なのか?だとしたらサファイア?新種だったらどうしよう!?
いいね、興味深いよ…!
ね、最ッ高に滾るでしょお!?」
こういうとこ、好き。
この間ペトラに話したら、心底わからないという顔をされたけど。
フィル、私はいいんだ。
好きな人と戦い、名誉ある殉職を遂げる。
これでいい。恋ができただけで十分。
きっと叶わないの。
ああでも
真っ白なドレス、本当に素敵だったなぁ…。