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あかいいと。【ハンジ・ゾエ/進撃の巨人】

第4章 浅き夢みし 【現代日本パロ】


「は…っ 着いたよ、」




ハンジさんは私をベンチに降ろし、てきぱきと手当する。
こんなこともあろうかと!
と、鞄から絆創膏が出てきたときは思わず面食らってしまった。



「ひとまずこれでいいと思うけど…」



口を一直線に結んだ彼女は呟く。
帰りはもちろんおぶっていく、と心配そうに見上げられ、
押さえこんできたものが今にも蓋をはじいて溢れてしまう。

無意識に唇を噛む。
だめ、限界だ。



「ハンジさん」

「ん?」



優しく笑いかけるハンジさん。
恋人になる前はこんな顔をするなんて知らなかった。



「…いつも、貴方は格好いいです。
苦しくなってしまうくらい。
感謝も、大好きも、じょうずに言えなくてごめんなさい…っ」



泡のように言葉が生まれる。
いつもの羞恥は感じない。

わかってほしくて、伝わってほしくて、私の想いが貴方の枷であってほしかった。
どこにも行かないで。



「…きっと離れない」



ハンジさんは立ちあがり、私は目を見開いた。
心を読まれているような錯覚に陥る。



「私の何が不安がらせているのかはわからないけど…。
あなた以外の人と一緒になることはあり得ない。断言するよ。」

「…っ」



違うんです。
勝手な自己嫌悪で雁字搦めになっているだけ。



「口下手で正直なが好きだよ。
分かってるだろ?」

「…は、い」



ハンジさんが私の右手を包み込む。
その力強さに、容易く安心しきってしまった。

それはおまじないをかけるときの神聖な気持ちに似ていて。
私は祈るように空を見上げる。

瞬間、心臓に響く音とともに花火が打ちあがった。
始まったね、と嬉しそうな声色。
触れるあたたかな指。
肌に反射する色彩。



「綺麗…」



ぜんぶ私のものだ。
きっと、一生。

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