Beloved villains 〖ツイステ短編集〗
第6章 レオナさん、アズールくんの分岐夢
『取引、だよね。私は何を差し出せばいいの?』
珍しく自分から対価のことを言い出さないアズールくんを不思議に思ってそう問いかける
「いえいえ、そんな境遇の貴方に対価なんてとんでもない!お代は結構です!」
「(記憶を書き換えられた"貴方自身”が僕の対価なのだから)」
すごく怪しいと思いながらも、私には彼の手に縋るしか道はなかった
アズールくんがそんなことを考えているなんて、思いもしなかった
「ああ、ですが。契約書には対価がつきもの。........こうしましょう、契約書にはあなたの記憶と引き換えに、僕が薬を作る。こう印します、いかがですか?」
私の要求しか叶えられていない、願ってもない契約内容だった。アズールくんに得が無さすぎる。
『アズールくんが良ければ........。』
「では、契約成立ですね。........さぁ、ここにサインを。」
カバンから出された契約書に、いつも持ち歩いているのかと頬が引つるけど、サインをする。
「ふふふ、では、薬は直ぐにお渡しします。試作で作ったものがまだ残っているので。」
「(貴方をいつか、あの寮長から奪ってやろうと思っていましたので........やっと僕のものになる。)」
アズールくんは、転移魔法で薄紫色に光る液体の入った瓶を出した。これを飲めば、全て忘れられる........
『........アズールくん、ありがとう。』
ゴクリ、と薬を飲み込むとお世辞にも美味しいとは言えない味が口に広がる。
『っは、、、あっ、ぅ、』
頭割れるようにが痛い、何も考えられない。私は何を、何を忘れようとしたの?
アズールくん........?
そうだ、わたし
アズールくんのこと、ずっと好きだった。
どんどんと意識がはっきりしていく。
目の前の貴方は心配そうに微笑んでいて
『アズールくん、、っ、!』
大好きなアズールくんにギュッと抱きつく。
「ふふ、おはようございます。ナギさん。ああ、今日も愛らしいですね........」
そう、これが私の日常。お付き合いしてるアズールくんとの日常。