Second reincarnation【ツイステ】
第14章 共生関係
この学園にはオレの知る限り、記憶がないやつが二人いる
一人は言わずもがな…
そしてもう一人はオレだ
元々死人という身の上、記憶がない生徒だなんて得体が知れなさすぎる
最初はそういう理由でアズールはオレに契約を持ちかけてきた
今思えば、同じ寮に組み分けられたから、多分厄介ごとを避けるための行いだと思う
アズールの言う契約がどういったものかもよくわからないまま、月に一度の血液提供を受ける代わりに仕事を手伝う。とサインをしてしまったことに今更後悔は特にない
オレ的にも理解者を得たかったし、入学したての当初は他に手段や方法を知らなかったし
そもそもオレは要領が悪い方で、自分で利益を考えるのも得意じゃなかったから
頭のいい奴に良いように使われるのも別に苦とは感じなかった
幸いなことに、オレ自身の持つユニーク魔法をアズールが気に入ってくれたので、彼に用済みだと言われるまでの居場所も確保できたし、取り巻きの双子とも特に険悪でもない
頭は悪かったけど、そういった世渡りは上手い方で助かった
最初は失った記憶を取り戻したいと思っていたが、環境が環境だし、今更思い出したところで死人のオレにはもうどうでも良いか…と方法を模索してそうそうに全てを投げ出した
オレにはアズールたちが居てくれればそれで良かった
…それで良かったんだ…オレの記憶が戻るまでは
「…笑えない冗談だな……こんなの、いつ誰に言えばいいんだよ…」
初めて名前を聞いた時から何となく引っかかるものがあったとは思ってたけど
今回手料理を食べて確信したし、昨日のことのように記憶も取り戻した
でもこればかりはいくらオレでもすぐ誰かに伝える気にはなれなかった
あいつがオレのことを〝思い出さない限り〟は…誰にも話さずいても問題はないだろうけど…
「…記憶を戻す方法探すって言っちゃったしなー…まぁなんとかなるか…そもそも聞かれてもないしな…」
朝の七時
制服のネクタイを締めながら、そんな独り言を呟いて自室を出た