第9章 対話、それぞれの都合
「晩飯なんか手伝う?」
逸巳と話していた瑞稀がひょい、とキッチンに顔を出しに来た。
「そっちの話は終わったの?」
「ん」
「そう、色々ありがと。 じき出来るし大丈夫。 ……でも、瑞稀さん元気そうで良かった。 忙しいって逸巳から聞いてたから」
「まあ、野暮用とか。 澤子はまた変な男に引っかかって無かった?」
「ちょっとまたって、何それ? 失礼じゃないの?」
何事も無かったように憎たらしく笑いながら瑞稀はダイニングに戻る。
いつもの瑞稀だ。
「………?」
刻んでる玉ねぎのせいかな。
涙が出る。
暖かいものがじんわりと胸に広がる。
ああ、分かった。
私は。