第8章 ひと月の性愛
「あれ? 瑞稀くん」
職場のビルから出てきた美和が瑞稀の姿を見付けて走って来た。
「今日は道場帰りだからついでに寄ってみた」
「そっか。 習ってるって言ってたもんね。 でも、連絡してくれれば良かったのに。 ずっと待ってたの?」
美和は会うといつも嬉しそうに走ってくる。
犬かなんかだったら尻尾振ってんのかな。
「でも、嬉しい。……え? なんかおかしい?」
「いや、可愛いなって」
「え、……え!?」
美和の顔が赤くなる。
「ん?」
「瑞稀くんにそんな事言われたの初めてだよ」
「そっか。……ごめんな」
「?いいけど」
「飯でも食ってく?」
「うーん……あたし瑞稀くんちのご飯に餌付けられてんのよね。 滅茶苦茶美味しいもん」
「まあ、……美和には肉しか出さないようにしてるらしいしな。 じゃ帰るか」
「瑞稀くん、なんかあった? 外食とか言い出すのも珍しいよ」
「……なにも」