第8章 ひと月の性愛
「どうだった? 受けたのは剣道だっけ」
「四段ですね」
「確か四段から小太刀が入るのかな。 でもお前なら問題ないだろう」
「はい」
「こっちの方も俺と引けを取らないし、まあ俺が言うのもなんだが、ああいうのの年齢制限って本当に時代遅れというか」
「俺は続けれればいいんで。 その為の区切りみたいなものだと思ってますよ」
「なるほど。 先週の感じだと以前より良くなっていた。 集中力が違う。 さっきの崎元もかなりいいんだがな」
「逸巳が何か?」
「……まあ、後から見てやってくれ。 じゃあ、また」
「はい」
逸巳は強い。
あの身体だし、始めてから5、6年の割に、同年代で逸巳とまともにやれるのはここではほんの一握りだ。
『守りたいものがあるから』
そう言っていた。
あいつが強いのはそれがあるからだろう。
瑞稀は時計をちら、と見た。
夜まであと数時間、今日は美和と付き合って一ヶ月だ。
付き合ってみて思ったが、美和とは相性も良いし、普通に人間としても好きだ。
別れたとしても、友人として傍に置けたらどんなに良かったろう。
だがそれは有り得ない。
男同士なら良かったと思う。
そういう意味では深入りし過ぎた。
こうなったのは親父がどうあろうが俺のせいだ。
俺が逃げていたからだ。
澤子。
あの性格だから、また余計な事考えて気に病んでたんだろう。
終わったら謝りに行こう。
というか……考えたら俺、最初から澤子に謝ってばかりじゃないか。
瑞稀は苦笑した。