第2章 崎元澤子
家に帰ると三つ下の澤子の弟、逸巳が台所に立っていた。
「お帰り、豚汁作ってるよ。 てか何、その毒々しい色の大量の花」
味噌の優しい香りがして、澤子はほっと和んだ。
「ほんと? いつもありがと」
澤子達の両親は五年前に事故で亡くなっている。
澤子は丁度短大を卒業する年齢だったが、逸巳はまだ中学を出たばかりだった。
澤子は出来の良い弟に苦労させない為に、私立の高校、大学と進学を彼に薦めた。
遊びたい盛りの年齢だが、逸巳は勉強の合間に家事をやり澤子は働いて、二人は一緒に暮らしている。
「今時変な人だね。 最近物騒だから気を付けてよ」
晩御飯を食べながら今日の出来事を話すと逸巳は澤子に言った。
「ん、大丈夫大丈夫。 ……よく分からないけど、変な人では無さそうだったし」
「どうかな。 姉さんは鈍感だから心配だ。 付き合ってる人も居るんでしょ?」
「……うん」