第2章 崎元澤子
「うーん……」
仕事からの帰り道、大量の花を抱えて澤子は家路についていた。
あの男性は何だったんだろう?
「澤ちゃん、惚れられたんじゃないの?」
職場の店長がそんな事を言って澤子をからかった。
綺麗な顔立ちの子だったな。
私よりは若そうだけど。
逸巳と同じ位だろうか?
澤子が短大を卒業し、今の花屋に務めてから二年目になる。
澤子のスマホの着信音がなり、見るとメッセージが入っていた。
三木晉、とある。
今度の休みの日に食事に出掛ける誘いのようだ。
三木とは短大仲間との飲み会で知り合って、付き合い始めた。
彼の優しげな顔を思い出す。
しかし何となく澤子の気は重い。
付き合って三ヶ月、最近彼が澤子の身体を求めてくる。
澤子はそういう類の事が苦手であり、彼に告白された時もそう言って一旦は断った。
「君を好きになったのはそんな気持ちからじゃない」
彼の真剣な様子と真摯な振る舞いから付き合いを承諾したのはいいが。
「結婚してから、なんて今時ダメなのかしら」
澤子は愚痴混じりに呟いた。