第8章 ひと月の性愛
「瑞稀さん!!」
久しぶりに道場へ顔を出すと、逸巳がぶんぶんと手を振ってこちらに走って来た。
「相変わらず元気そうだな」
「瑞稀さんこそ! 一ヶ月ぶりですか? 忙しかったんです?」
「そうだな。 昇段審査とか色々」
「電話でも話しましたけど、姉さんも気にしてましたよ。 僕も葵ちゃんの事、余計なお世話でした。 すみません」
「それは全然気にしてない」
「どうですか? 終わったら飯でも」
「済まないが今日はちょっと用事がある。 ……また近いうちに行くよ」
「はい! 絶対ですよ」
「それよりどうだ? 身体はなまってないか?」
「僕も朝走り始めたんですよ」
「後から闘るか」
「本当ですか!? よろしくお願いします!」
「瑞稀」
「加藤さん」
「師範、……じゃあ僕戻りますね、また」
ぺこりと頭を下げて逸巳が稽古に戻って行った。