第7章 救うも止めるも艶を添えるも理性
この間の瑞稀の言動。
それでも、いつもみたいにまるで何も無かったように飄々としていてくれれば良かった。
瑞稀が改めてあれは冗談が過ぎただけだと笑ってくれたら、澤子も非難がましく小言を言って終わった筈だった。
だが瑞稀はあれから家に来ていない。
あの行動に意味を持たせると途端に全てが生々しくなる。
自分が瑞稀に対して異性として意識しているのではないかと思い知らされる。
そして澤子は自分の中で生まれて初めて感じるそんな感情に戸惑うしかなかった。
「おはよう。 姉さん、起きてる? 朝飯」
「お、おはよう」
澤子は赤い顔を髪で隠しながらのろのろと起き上がった。
「瑞稀さん最近来ないね」
朝食をとりながらつまらなそうに逸巳がぼやく。
「……そうね。 大学の試験やら色々忙しいんじゃないの?」
「最近は道場でも見ないし……とうとう彼女でも出来たのかな」
彼女────