第7章 救うも止めるも艶を添えるも理性
大分気温が下がってきたようだ。
澤子は仕事に向かっていた。
吐く息が白い。
瑞稀の事でもうひとつ、考えている事がある。
『人試すような事止めたら?』
あの言葉がずっと引っ掛かっている。
私はそういう風に見えるのだろうか。
そんな風に接していたのだろうか。
前に付き合っていた三木の事を思い返す。
付き合ううちに彼の異性の部分が見えてきて嫌になっていた。
だがいくら理性で抑えても普通の男性は。
……いや、女性もそうなのだろう。
ただ自分が特殊なだけで。
頭の何処かで分かっていた筈だ。
私は彼を試していたのだろうか。
……瑞稀にそう思われていたのだろうか。
彼がいなくなった理由。
葵ちゃんみたいに、私は嫌われてしまった?
私があそこでみっともなく取り乱して拒んだから?
面倒臭く思われた?
それとも彼女が出来た?
瑞稀さんは今頃どうしているんだろう。
以前は手を伸ばした先に居た彼。
なのに、簡単に見えなくなってしまった。