第7章 救うも止めるも艶を添えるも理性
目を開けて澤子は呆然とした。
直後、一瞬で顔が真っ赤になる。
「ゆ、夢………?」
心臓が早鐘を打ったようにドキドキしている。
なんで、あんな……
澤子はいたたまれなくなって布団に潜り込んだ。
私が……男の人と………
澤子は男性に対して性的な感情を持った事が無かった。
「瑞稀さんが、あんな事するから」
腿に触れた手の感触。
耳許で囁く低い声。
背中に押し付けられた堅い胸や腹。
首筋に触れる息や舌の感覚。
男性というなら弟の逸巳をいつも見慣れている筈なのだが、あの時の瑞稀はまるで別の生き物のように思えた。
欲望を持って自分に近付く男性は今まで少なくなかったが、そういう時は、自分が体温の通わない人形にでもなったような冷たい感覚しかなかった。
しかし瑞稀に対してはまるで逆だった。
そんな自分に驚き、怖くなる。
それまでは弟のような、といえば語弊があるが、少しずつ年相応の幼さを見せてくれるようになった瑞稀に対して嬉しく思い、親しみを持つようになっていた。