第7章 救うも止めるも艶を添えるも理性
「瑞稀様、旦那様が書斎でお待ちです」
朝、ロードワーク用にジャージに着替えている途中で瑞稀は呼び出された。
「入るぞ」
「走りに行く前か、すまんな」
「……え?」
「瑞稀くん、久しぶり」
目の前ではテーブルを挟んで和やかに茶を飲んでいる親父と……この女、いつかの美和って言ったっけ。
なんでこいつがこんな所にいるんだ?
「瑞稀、少しお前と二人で話がある。 このお嬢さんをお前の部屋に案内してあげなさい」
高雄はにっこりと微笑んだ。
「びっくりした……この大きなお屋敷もだけど、凄く若くて素敵なお父様ね。」
「美和、なんでここに来たんだ?」
美和は物珍しそうに瑞稀の部屋をキョロキョロ見回していたが、瑞稀の苛立った様子に決まりの悪そうな顔をしてそっぽを向いた。
「だって瑞稀くん、連絡してもちっとも出てくれないし。 大学の子に住所聞いて、図々しいかなとは思ったんだけど。 そしたら、瑞稀くんちの使用人って人が逆にうちに訪ねてきて」
「もうここへは来るな」
「でも、あたし……」
「迷惑だ」
瑞稀は美和を見詰めて冷ややかに言い切った。
何も知らないとはいえ無防備過ぎる。
何かあったらどうするんだ。
「……とりあえず親父と話してくるからここで待ってろ」
「……はあい」
不貞腐れた様子の美和を残して高雄の書斎へ戻る。
「親父、今度はどういうつもりなんだ」
「瑞稀、いきなり喰えとは言わん。 せめて女と付き合え」
「……だから俺はそういうのは」
「お前はセックスが喰うことに直結している様に思っているかも知れないが、喰わずとも我々は普通にする」
「だからって付き合おうがやろうがやるまいが俺の勝手だろう」
「百聞は一見にしかずという。 これ以上は説明はしない」