第7章 救うも止めるも艶を添えるも理性
瑞稀は朦朧として目が覚めた。
高い窓からは既に強い光が差している。
このところよく視る悪夢だ。
「ぐ……」
正気に還ると動悸と強烈な吐き気、それに渇きに襲われる。
枕元の水差しから直接水を喉に流し込む。
葵の一件から、瑞稀は崎元家から疎遠になっていた。
何故澤子にあんな事をしてしまったのだろう。
そしてあそこを避けている理由は久しぶりに感じたあの時の自分の『欲』にあった。
あの身体を自分のものにしたい。
だがそれは性欲とも食欲とも説明がつかなかった。
あの家。
いつも広いだけで冷たい自分の家と違って、なんだかあそこは鬱陶しくて暖かくて居心地が良くて……つい足を運んでしまっていた。
それでも俺はそもそも他人と関わるべきじゃない。
『瑞稀さん』
騒がしい鳥の声に混ざって澤子が呼びかける声が聞こえた気がした。
「……うるせえよ」
忘れていただけだ。
……そして元に戻るだけだ。