第6章 平穏さにこそ潜む
「あ、瑞稀君こんな所に!」
「葵ちゃん」
「何やってるの? 向こうでゲームしよ」
「ゲームなんか好きじゃない」
「ねえ、そんな事止めて」
葵が瑞稀の腕に自分の腕を絡ませる。
瑞稀は即座に手を振り払い、心底嫌そうな顔で葵を見た。
「触んな、鬱陶しい」
そんな瑞稀の様子に葵もだろうが、澤子の方が驚いた。
でも、こんな瑞稀を前にも見た事がある。
瑞稀の飲みかけのお茶を葵が飲もうとして、瑞希はそのグラスを地面に叩き落とした。
「な、なによ。 私よりそんなオバサンがいいって言うの?」
「……下らない」
吐き捨てる様に言って瑞稀が立ち上がりそこから離れた。
「葵ちゃん……」
「…………」
無理もないが、葵はプルプルして涙を堪えていた。
「……大丈夫?」
澤子がそっと頭を撫でると葵は澤子に抱きついて泣き始めた。
「……っ、うゎーん!」
「うぇっ、ごめんなさい、澤子さん、ひっく、」
「いいのよ、別に」
この子、悪い子じゃ無いんだわ。
「うっ、瑞稀君って、ババ専ってやつなのかな」
……悪気は無いのよね……多分。