第6章 平穏さにこそ潜む
それから瑞稀は週に一度位の頻度だが、崎元家に遊びに来る様になった。
逸巳と稽古をしたり、澤子が休みの時は三人でベランダに出てのんびりと他愛も無い話をして過ごす。
だけど最近、若干困った事が一つ。
「逸巳くーん!」
「あら、葵ちゃんいらっしゃい」
「あれ? また来たの、葵ちゃん」
「瑞稀君もこんばんは!」
「……ああ」
逸巳の大学の後輩の葵という女の子だが、瑞稀と一度家の前で鉢合わせてからしょっ中遊びに来るようになった。
まだ大学に入りたてで元気が良くて可愛い子だが、瑞稀狙いなのがバレバレというか、……今日も必要以上に胸の開いたタンクトップとシースルーのシャツにショートパンツという出で立ち。
多分それに気付いてるのは私と……彼女が来ると何故か一気に不機嫌になる瑞稀さんもかな。
「澤子、何やってんの」
瑞稀がベランダにやって来て澤子に声を掛けた。
いつの間に最初のアレから名前呼び捨て呼びが普通になったらしい。
「ん、お夕飯の絹さやの筋を取ってるの」
「筋って」
瑞稀はクスクス笑っている。
何か可笑しいのかしら。
「俺も手伝う」
「本当? ありがとう」
「こう?」
「んーん、逆。 こっちからこう」
「こっち?」
「うん、そうそう……って、何また笑ってるの?」
「いや、澤子ってなんかなごむ」
「は?」