第6章 平穏さにこそ潜む
「あー、今日は面白かったな」
瑞稀が帰った後、楽しげに呟く逸巳を澤子は苦々しげに見ている。
「逸巳は分かるけど、瑞稀さんがあんな人だってなんか意外だわ」
「確かに。 道場でも普段からあんまり感情とか出さないかも」
「やっぱりお家の事で色々大変なのかしらね。 気の毒に」
兄弟も居ないって言ってたし、厳しく育てられたんじゃないかしら。
「……ていうか、姉さんってなんか若さが無いよね」
「え?」
「世帯臭いというか……世の中の24歳ってもっとこう」
「つまり、おばさん臭いって事?」
「い、いや、そこまでは言ってないけど!」
おばさん……
確かに、ショッピングとか行くよりもスーパーで献立考えてる方が多いわ最近。
「そういえば、姉さん瑞稀さんは大丈夫なの?」
「もう、また誤魔化そうとして……」
「いや、姉さんてほら、男に触られるのダメじゃない」
「あれは……多分びっくりした方が先に立ったから?」
「……あー、なるほど」
でも、何でだろう?
今想像しても嫌じゃない。
瑞稀さんって男っぽいけど男っぽく無いというか……変に安心感がある。
というか、おばさん……
「年相応に合コン? でも行ってみようかしら」
「ええ? どうせまた変な男に引っ掛かるんだからもう止めてよ……」
逸巳は心から迷惑そうな顔をした。