第6章 平穏さにこそ潜む
「ぶ…」
「ふ、おい、行ったか」
「……」
逸巳が窓の外の三木の様子を瑞稀に伝える。
「行きました行きました、ミミズクみたいにちっさくなって可哀想に」
「……ぶはッ!!」
「ブフッ!! 僕もう、無理!!」
突如瑞稀と逸巳が爆笑し、事態を飲み込めなかった様子の澤子がはっと我に返る。
「ちょっと、あなた達!!」
「……ち、ちょっと待って、ふふッ…」
「ふはッ、……奴のあの顔! 腹痛てぇー……プッ」
「ふ……てか瑞稀さん、えらいお坊ちゃんじゃないですか」
「知らねえよ、家の事は……ハァ、おもしれー」
「いやぁ、ありがとうございました……あーしんど」
「こっちこそご馳走さん、腹一杯だわ俺」
「全くもう……悪ふざけが過ぎるでしょう。 呆れるわ」
「まあまあ、姉さん。 瑞稀さんのお陰であんなのと切れて良かったじゃない」
「悪い。 奴の必死感が面白くて、つい」
二人は顔を見合わせてまた笑い転げ、澤子は首を左右に振って複雑な表情で夕食の準備に取り掛かった。