第5章 遅れ咲きの茎に輝けるただ一輪
店を出た所で瑞稀の後ろ姿に追い付き息をつきながら声を掛けると、瑞稀が澤子を振り返った。
「わ、私も連絡して良いですか?」
「え? なんで……」
「め、迷惑、ですよ、ね」
「……いや」
少しの逡巡ののち、瑞稀か答える。
「……敬語止めてくれたら嬉しいけど」
「は……うん、分かった」
「うん、じゃ」
「じゃあ……」
ほっとした表情で澤子は瑞稀を見送り、店の席に戻った。
「姉さん、どうしたの?」
「こないだのお礼、……言い忘れて」
「ああ、そっか」
「良い人ね、とても」
「……姉さん、瑞稀さんはああ言ったけど、俺は彼氏の件、自然消滅でもいいと思うよ。 向こうが悪いのにこっちがそんな労力使うのって馬鹿馬鹿しいし」
「うん……」
逸巳は私を心配してくれているんだろう。
あの人、瑞稀さんって嘘が無い。
私の周りには居ない。
また話したい気がする。
……連絡してもいいんだ。
でもきちんと三木さんに言おう、と澤子は思った。
先程諌められたというのに、澤子の心は久しぶりに軽くなっていた。