第5章 遅れ咲きの茎に輝けるただ一輪
「小田さんもそう思いますよね?」
「え、ごめん。何だっけ?」
「浮気なんかされたら普通は別れるでしょ」
「逸巳ったら」
「そうなのか」
「小田さんは違うんですか?」
「……いや、俺付き合った事とかないから正直よく分からない」
「ええ?」
「モテそうなのに」
二人共同じリアクションで瑞稀を見、瑞稀はそんなに珍しい事かな、とでもいう表情で返す。
「ええと……」
「カッコイイです!」
「へ?」
「そういうの、硬派だと思います。 やっぱり小田さんは今時の男とは違いますね!」
呆気にとられている瑞稀に対して逸巳がキラキラした目で彼を見詰めている。
元々キラキラしてる顔の逸巳の顔が更に輝いている様を見ておかしかったのか、瑞稀は思わず吹いた。
「小田さん?」
「……瑞稀でいいよ」
何で笑われてるのか分からない、という顔をしている逸巳に未だくっくっくと笑いながら瑞稀が答える。
またこの人笑ってる。
澤子はそんな二人のやり取りを見ながら不思議な気分になった。
端正な顔を崩して笑う瑞稀の様は普通に年相応でなんだろう?
かわい……
瑞稀をじっと見詰めていた澤子に気付いて彼は笑いを引っ込め、はっとして目を逸らす。