第4章 希望は頑丈な杖
彼の姿が見えなくなり澤子は自分の身体を抱き締めると彼の触れていた腕や肩が冷えて冷たくなっていた。
「う……」
自分が情けなくて悔しくて涙が滲む。
澤子はごしごしと唇を拭った。
三木に対して、最初は大丈夫だと思ってた。
でももう触れられるのが嫌だ。
車内で垣間見た彼の顔。
昨晩他の女の人に触れてた唇。
三木のその感触もぞっとした。
澤子はのろのろと歩き出した。
通りのショーウィンドウのペットショップには犬や猫が並んでいた。
可愛い。
大きな瞳の子犬や子猫達が小さな脚でガラスをコツンコツンと叩きながら澤子に尻尾を振っている。
癒されるなあ。
「良い人に貰われるといいね」
電車で会ったあの人。
……もしかしてあんな人なら私も普通に付き合えるのだろうか。
あの時の、あんな温かい気持ちでずっといられたらいいのに。