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Mirror【R18】

第4章 希望は頑丈な杖


家に着くと、逸巳はまだ帰っていないようだった。
澤子が冷蔵庫の中を見て夕飯の支度を始める。

暫くしてまたね、という若い女性の声の後に家のドアが開いた。

「ただいま」

「あれ、誰かと一緒だった?」

「うん、大学の友達」

「逸巳ももうそんな歳になったのねぇ」

感慨深げに澤子が逸巳を見る。
あんなに小さくて姉ちゃん、姉ちゃんと私の後をくっついて来た弟は、今は見上げるほどの男性に成長した。
姉の贔屓目かも知れないが、頭が良く素直な性格の弟は付き合う女性にも困る事は無いだろう。

「結婚したい相手が出来たら教えてね」

「なっ、なにそれ突然」

逸巳はわたわたと焦った様子で否定した。

「今は勉強とかで手一杯でそんな気が起こらないよ。
そんな相手も居ないし 」

「私の事なら気にしなくていいから」

「そんなのは関係ないけど……」

「そう?」

逸巳の事だから良い娘をお嫁さんにするんだろうな。
可愛い子供を持って休日はその子達と遊んで。
家の事もする優しい良い夫になりそうだ。

「そういえばこないだ道場で指導して貰った人がいたんだけど、俺より歳下なのに凄い強くてさ」

だけど自分の事となるとそんな先の事が想像出来ない。

ぼんやりと考え事をしている澤子をよそに、逸巳は楽しげに習い事の話をしている。

「身体の使い方が他の人と違うっていうか……他にも何かやってるって聞いたけどそのせいかも。 ああいう人だったらモテるんだろうけど」

そういえば三木もずっとジムに通いサッカーをしていると言ってた。

「……スポーツしてるからっていい人とも限らないと思うわ」





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