第4章 希望は頑丈な杖
──何かある。
そのお陰で彼の体がすっと冷えて冷静になった。
「美和っていったか」
「……なに?」
「俺にどうして欲しい?」
「……って」
「何?」
「……あたしの体触って」
彼女がこうなったのはいつからか。
タクシーに乗る前からか?
「……あ」
「ん……っ」
「いい、身体が熱い……」
「そんなにこれが好き?」
「違うの、あたし」
「美和は誰とでもこんな風なの?」
「……ちが、そうじゃない」
彼女が震えながら左右に首を振る。
服の上から身体を撫でるだけで喘いでいる。
「さっきの……お店で…」
店?
普通に皆が話してて、自分の傍に彼女が座ってその時は彼女は普通だった。
「俺が好みだった?」
「うん、だけど、隣になって、途中でなんか…」
大した話は……
『これ美味しそう!頂戴!』
確か彼女は瑞稀の飲んでた酒を飲んだ。
「美和」
もう一度彼女の顎を摘んで口付ける。
「……ん、んんっ!!」
彼女の身体がいっそう激しく細かく震え、力の抜けてしまった女を土足のまま部屋にあがり見つけたベッドに運ぶ。
満たされたのか酔い過ぎたのかはわからないが、美和はぐったりとして荒い息を吐いていた。
何にしろこれ以上ここにはいない方がいい。
「ごめん」
そのままに置いた彼女に多少後ろ髪を引かれる思いもあったが、瑞稀は家に戻った。