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Mirror【R18】

第3章 健全な精神は健全な肉体に宿りかし


人が降り大分まばらになった車内で、男性は澤子に告げた。

「俺はここで降りるけど」

見ると彼女の目の前の吊革が空いている。

「あ! はい、大丈夫です」

それにも関わらず、澤子は彼にずっと掴まっていたのに気付き慌てて手を離した。

「こないだ」

「え?」

「こないだは悪かった。 変に思っただろ?」

花束の事だろうか。
……確かに突然の事で変には思ったけど。

「いえ、そんな」

「そっか。 良かった」

男性はふっと笑う。

「じゃあ」

……笑った。
出会ってからずっと無表情だったけど彼は笑うとなんというか……
当たり前の事に澤子は驚いていた。

「…ありがとうございました」

彼の後ろ姿を見送る。
逸巳の方が背が高いようだが彼には余分な脂肪が無く、すっと引き締まった体型をしていた。


──ああいう人もいるんだな。

ろうそくの火にぽっと灯りが点ったような、澤子は温かい気分でホームを降りた。




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