第3章 健全な精神は健全な肉体に宿りかし
……この家には落ち着いて寝れる日が無いのか。
今晩も女の喘ぎ声を聞きながら寝床に入る羽目になった瑞稀は苦々しく思っていた。
それなりの経験はあったとはいえ、瑞稀はきちんと女性と付き合った事が無かった。
普通に交際を楽しむなんて資格は自分には無いし、それに性処理だけなら自慰で済む。
ふと、瑞稀は今日偶然電車で会った花屋の女の事を思い出した。
彼女の足がどこか悪いのは、初めて店で会った時に気付いていた。
最初に瑞稀の袖を掴んだ手が微かに震えていた。
『私達の場合加減を誤ると相手がすぐに壊れてしまう』
解っている。
──色んな意味でな。