第13章 Mirror
瑞稀と澤子の二人は相変わらず仲睦まじかった。
ただ、たまに澤子が昼過ぎまで姿を見せない事があり瑞稀に聞くと気まずそうな顔をした。
「ちょっと無理をさせ過ぎた」
「そっち、……てかあんたどんだけなの」
それでも結婚から何年か経ったある秋晴れの日に、嬉しい報告を聞く事になる。
「逸巳、私妊娠したのよ」
澤子は不妊だと聞いていたが、片方の卵巣で懐妊したらしい。
「姉さんから聞いたよ、おめでとう!!」
「……何泣いてんの、お前」
「え、泣くでしょこんなの」
「まだシスコン治ってないのか」
「瑞稀さんは嬉しくないの?」
苦笑していた瑞稀の表情がすっと厳しくなった。
「嬉しいんだろうが、いくつか問題がある」
「は、問題?」
「いつか話すよ。 お前には」
そして生まれた男の子供にはイツキという名前が付けられた。
知らせを受けて産院に駆け付けると、澤子の胸には小さな命が抱かれていた。
「名前、澤子がお前と俺の音をそれぞれ取ってつけたらしい」
「姉さん、僕………」
「逸巳ったら、泣きすぎよ」
「不思議なもんだな、赤ん坊って」
瑞稀はおっかなびっくりという感じで子供に触れていたが、やはり嬉しそうだった。
「……親父の洗礼が怖いな」
ぽつりと瑞稀が呟いて、三人の空気が固まった。