第11章 感情は航海の帆を張る
コンクリートの灰色の階段が地下に伸びている。
昼間だというのに暗く、何だか嫌な感じがした。
「…瑞稀さんは、ここに?」
「…はい」
カツン、カツン、というワズの靴音と共に下に降りていく。
「……こちらでございます」
ワズは重そうな鉄製のドアを開ける。
「……………?」
「暫くここでお待ち下さいませ」
ゆっくりとドアが閉まり、ガチャンと音がした。
「え……?」
ノブを回してみたが、鍵がかかっているようだ。
「わ、ワズさん、ワズさん?」
澤子は戸口で彼の名を呼ぶが、何の音も帰って来ない。
なんだろう?
閉じ込められたような……
澤子は改めて部屋の辺りを見回す。
無機質な内装の天井や壁には鎖みたいなものがいくつかぶら下がっている。
ソファベッド。
あとは子供が使う木馬みたいな玩具がいくつか、食器、理科の実験道具のようなもの。
だが、何かが異様だ。
床や壁に茶色い様な赤い様な染みがいくつもある。
地下なのでもちろん窓もない。