第11章 感情は航海の帆を張る
小田家。
閑静な住宅地にその家はあった。
うちが20個位は余裕で入りそうだ。
逸巳から聞いて大体の場所は知っていたが、その様相からすぐに分かった。
瀟洒な感じのお屋敷。
門のインターホンを押してみると、男性の老人の声が聞こえた。
「どちら様で」
「……瑞稀さんの友人で、崎元、澤子と、言います」
暫く無言ののち、お入りください、という声と共に門が開いた。
門から玄関まで結構な距離を歩いて、玄関先に立った。
「ごめんくだ……」
ノックをする前に大きなドアが開く。
「崎元澤子様でございますね。 私は執事のワズと申します」
碧眼の洗練された様子の初老の男性が澤子を迎えた。
外国人のようだが、流暢な日本語だった。
「いきなりすみません。 瑞稀さんに会いに来ました」
「……どうぞ、こちらへ」
広い玄関ロビーを通ってワズの後についていく。
彼はいくつかの扉が側面についた長い廊下の奥のドアを開けた。