第10章 前後を切断せよ
「自分の生の起源を考えた事は? ライオンが生きる為に子鹿を喰う事を責めるのか? お前のしている事は自分の母親、生に対する冒涜だ。
私たちはただ種が『違う』だけだ」
高雄の言う事はある意味間違ってはいない様に思える。
ただ自分とは絶対的に相容れない。
相容れては駄目だ。
「……話は分かった」
「だが、親父や俺の力の意味は、この家を肥え太らせる理由は何故だ? 愛するものを守れないのにそうする必要が何処にある?
あんたは自分が進化し優れた種だと思っている。 だが俺からすれば自分も含め、退化した虫ケラにも劣る存在だ」
「例えそうだとしても」
高雄は相変わらず表情を変えず、腕を組んで瑞稀を見返した。
「私達は『そうしなければ』生きていけない。 このままではお前の身体はじきに限界が来るだろう。 これは議論するまでも無い事実だ」
結局、こういう結果になってしまう。
だが自分にはこの結末しか思いつかない。
これ以外に道が無い。
「──俺はそれでいいと思う。 あんたや母さんには悪いが、俺は自分の生を否定する」