第15章 衝突
ヒーロー仮免許試験から一週間が経った土曜日、午前9時。
仮免補習会場。
「えーそれでは、本日から仮免不合格者の皆さん、ならびに仮免仮発行となった方の補習を行なっていきます」
どうも、公安委員会の目良です、最近ストレスで蕁麻疹が出るようになりました、今日も元気にいきましょう。
社会の闇を露呈させながら、公安の目良が、初回の補習内容について参加者たちに説明をし始めた。
「皆さん、まずはこちらのプリントをご覧ください」
係員から、学生たちに配布資料が配られる。
そこには、今回の講習参加者達の名前が載っており、意図的に二人ずつの組み分けがしてあるような表が記載されていた。
「本日はまず、こちらが決めた組み合わせの相手と全力で戦っていただきます」
「…戦う…!?」
「コスチューム持ってこいってそういうことかよ…!」
ざわつく参加者達の後列で、プリントを眺めていた爆豪と、の視線が交差した。
『…ペアだね』
「殺す」
『殺さない』
「さて、注意事項があるので良く聞いてくださいね」
そこで目良はひと呼吸置き、手持ち資料をめくりながら、参加者達と視線を合わせず、告げた。
「えー…敗者は、今日で補習終了です」
「「「………え?」」」
「仮免許を仮発行している学生含め、負ければ、この補習の参加権を失う。資格を剥奪します。つまり、今回の仮免取得はできないということになります。よろしいですか?」
初日早々、権利剥奪。
全くよろしくないアナウンスを淡々と告げる目良。
クレームが予想されるため、意図的に参加者達と視線を合わせないようにしていた目良は、参加者の中で唯一、精神的にも能力的にもハンデ差が発生している一組へと視線を向けた。
(……おや、普通は抗議してくるところだが…)
この参加者達の中で唯一、仮免許仮発行の資格を持っている。
つまり彼女だけが、「合格者」になり得たはずの高水準の総合能力を持ったまま、この場に存在している。
彼女と戦う爆豪は、当然、不利な戦いだと文句を言ってきてもおかしくない状況下だというのに。
公安の予想に反して。
彼は額に青筋を浮かべたまま、その瞳に闘争心をありありと浮かべ。
心底楽しそうに、笑っている。