第14章 ホークスが好きな彼女
「、コレ飲むか?」
週末前夜の金曜日。
夜が更けて、クラスメート達が続々と眠い目を擦り、自室へと向かう中。
いつも自室に篭りがちなは珍しく、共有スペースに居座り、携帯を片手に、窓際に近いソファに座って首を傾け、夜空を見上げていた。
『お茶?ありがとう、嬉しい』
「…眠れねぇのか。明日の補習、来るんだろ。早めに寝た方がいいんじゃねぇか」
そう友達のことを労う轟は、眠そうにあくびをした口を片手で隠しながら、リビングにまだ残っていた緑谷と、常闇にも視線をやり、「茶、いるか?」と丁寧に声をかけた。
「ありがとう、もらおうかな。轟くんも眠そうだね?寝なくて大丈夫?」
「有難い。今晩はやたらと冷え込んでいるな」
轟は、始まってそれほど日が経っていない寮生活の中で、クラスメート達に「夜に弱い」ことが知られている。
おそらく、本日もだいぶ限界がきているのだろう。
彼はボーッとしながら、四つの湯呑みをキッチンカウンターにゆっくりとした所作で運び、うとうととしながら急須を傾けた。
「…もう少ししたら寝る」
(我慢しないで、寝たらいいんじゃ…)
そんな危なっかしい手元を落ち着いて見ていられず、緑谷と常闇が徐々にソファから腰を上げ、中腰の姿勢で轟の方へとにじり寄っていく。
不意に、が小さく、くしゃみをした。
その声を聞き、舟を漕いでいた轟が、ふっと目を開けた。
彼は危うく、お茶を波波注ぐ手前で急須を平行に持ち直すことに成功した。
そこで意識が急にしっかりしたのか、湯呑みに鶯色のお茶を注ぎ終わると、手早くそれをリビングのローテーブルへと並べてくれた。
『ありがとう』
「ありがとう轟くん!やっぱり、寝た方がいいんじゃ…」
「危うく溢すところだったぞ」
「…。」
轟は緑谷の声に無言で首を横に振り、おもむろに、自分が羽織っていたカーディガンを脱ぎ始めた。
そして彼は、温かい湯呑みを両手で持って、指先から暖を取っているの隣に腰掛け、彼女の両足に、カーディガンを掛けた。
『…これ』
「寒いんだろ」
『ありがとう、膝かけ取ってくる』
「別にいい。それより珍しく、まだ部屋に行かないなら…」
少し話がしたい。ダメか?
そう言って、を見つめる轟を眺めて。
緑谷と常闇は、白目をむいた。