第13章 ホークスの宅急便
眠りにつくまでの数秒間。
思い出さずにはいられない。
おやすみ、と、引き寄せて。
抱きしめた時に香った、彼女の艶やかな後ろ髪。
遠くを見つめて、俺を見ない彼女の瞳の色。
どんなに忙しく過ごした日でも。
ふと、彼女の姿が頭に浮かぶ。
毎晩毎晩、繰り返し思い出す。
思い出さない夜などないほどに。
人知れず、俺は。
仕事で遠くに行ってしまった彼女に、今でも勝手に、未練たらしく、飽きもせず、何年も何年も焦がれ続けている。
家に帰り、ソファに雪崩れ込んで。
ローテーブルに置いたアクセサリーの箱を睨みつけた。
「…まーた、いらんもん買うてきて」
買う前に気づけという話だが。
こんな高価なアクセサリーを意味もなく受け取ってくれるほど、彼女は世間知らずではないし。
俺への下心も持っちゃいない。
つまり、当てもなく、何十万もするアクセを衝動買いした今現在の俺は。
(…浮かれすぎ。ダサすぎ)
わかっちゃいるけど。
(…早く会いたい)
頭の中が、今週末の事ばっかりで。
落ち着いていられない。
ソファでグダグダとしていると、不意に。
携帯が鳴った。
俺は画面を確認し、驚いて一瞬、携帯を取り落としそうになってから、バサッと急いで飛び上がり、ソファに正座で座り直した。
そして、緊張しながら電話に出た。
「…もしもし?珍しか、電話くれるなんて」
<…ホークス?今大丈夫?>
彼女の声が、電話から聞こえてくる。
気分が高揚し、無意識に両羽がパタパタとしてしまう。
「全然大丈夫!どげんしょったと?」
<あのね>
<今週末、仮免の補習で行けないの>
<ごめんなさい>
<だから平日のインターンも>
<印鑑がもらいに行けないから、きっと、行けない>
俺は携帯を握りしめ、反射的に答えた。
「お任せあれ!!!ハンコぐらい速達でお届けに行きますよ!!!この!!!ホークスが!!!」