第10章 お先ダークネス
仮免試験の翌日午前8時。
波乱万丈だった夏休みをなんとか終え、雄英高校ヒーロー科は、新学期を迎えた。
始業式へと向かう準備をするため、続々と生徒たちが共有スペースへと現れる。
既に朝食を摂り終わり、リビングで轟と一緒にコーヒーを飲んでいたは、じーっとその集団の行動を真顔で観察していたが、二人の生徒に視線を止めた。
『緑谷くん、爆豪くん』
「あ、さんおはよう」
『おはよう。その怪我、どうしたの。どうしてまだ制服を着ないの?』
ほとんどの生徒達が制服に袖を通している中、なぜか緑谷と爆豪だけは、部屋着のままから、一向に着替えようとしない。
既に準備を済ませている彼女から見れば、あまりにものんびりと朝食を摂っているように見える二人。
爆豪は聞かれたことに素直に答える気はないらしく、ものすごい勢いで食事をかきこんだ後、ガタッと席を立った。
それを見て慌てたのか、緑谷も朝食をかきこみ、空になった食器を手に持って立ち上がる。
「あ…えっと、実は…昨日の喧嘩で、謹慎処分に…」
『…謹慎?』
「え!?」
「ケンカして謹慎ー!?」
芦戸の驚愕した声に反応し、クラスメートたちがどよめく。
「馬鹿じゃん」
「ナンセンス!」
「馬鹿かよ!」
「骨頂ー!」
罵詈雑言が飛び交う中、緑谷が丁寧に謹慎期間の詳細を打ち明ける。
爆豪は4日、緑谷は3日の寮内謹慎。
その謹慎期間が解けるまでの間、二人は、ケンカの事実を知り激怒した担任に、朝晩二回の寮内共有スペース清掃を義務付けられたらしい。
『…爆豪くん、今週の土日』
「爆豪、仮免の補習どうすんだ」
「うるせぇ、てめェらには関係ねぇだろ」
『寮から出られないなら、どうしたらいいかイレイザーヘッドに聞いてこようか?』
「だまれや偉そうに心配してんじゃねぇエコヒイキ野郎!!」
急に飛んできた鋭い指摘に、が表情を曇らせる。
「…爆豪、その言い方はねぇだろ。は俺たちと違って、ちゃんと仮免試験に合格してる」
「正規免許を仮発行すっから仮免なんだろォが、「仮免の仮発行」なんざ聞いたことねェんだよ!」
を睨みつけたまま、不満をその顔に滲ませて。
爆豪が本音をシャウトした。
「つかてめェに仮発行できんなら俺にもしろや公安!!!」