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イカロスの翼【ヒロアカ】

第1章 神話的な彼女




圧倒的に不足している情報量。


(え、相澤先生、説明それだけ?)


なぜ、「この時期に」「A組に」転入生を迎えることになったのか。
その違和感に気づいた緑谷、爆豪、轟の三人は、その場に留まり、ただじっとと名乗った少女を見つめ続ける。


『どうしたの?先生が呼んでるよ』
「あっ、えっと…さんは行かないの?そっか、少し前から住んでるから、もう施設案内は必要ないのか」
『うん、そうだね』


早く行きなよ、とは笑わずに言った。
理由のわからない威圧感を感じ、一瞬、緑谷がたじろいでしまう。


「じゃ、じゃあ行くね。自己紹介はまた後で…」
『キミ達もだよ』


そう言って、は鋭く爆豪と轟を一瞥した。
その横顔を見て、緑谷は自分が感じた威圧感の正体が、「彼女の眼」にあるのだと理解した。


(…あ……眼が燃えてる)


彼女の瞳が、燃えている。
炎が漏れ出しているわけではない。
正しくは。
透き通る白眼に縁取られた黄昏色の瞳の奥深く。
白色の炎が揺らめいて。
大きな大きな彼女の瞳が、淡い光をたたえているのだ。
まるで、聖火のように。


(…個性、なのかな)


彫刻のように整っている彼女の顔の輪郭と、そこに収められた、強く印象づけられる瞳の光は、彼女が笑みを浮かべずにいる限り、見る者に猛々しく神々しい印象を与え続けるのだろう。


『ねぇ、人の顔をそんなにジロジロ見て、何を考えてるの?』


始めこそ警戒心を滲ませていた爆豪と轟も、微動だにせず、彼女の瞳を興味深そうに、じっと見つめたまま動かない。
何を、と言われれば。
三人とも考えていることは同じだった。


彼女は、まるで。


「ごめん、神話に出てくる登場人物みたいだなって…」
「神話かよ」
「神話みてぇだと思った」


素直に感想を口にしてしまった三人。
は一瞬黙って。
さも興味なさそうに言葉を発した。


『よく言われる』


言われるんかい!と爆豪が反射的にシャウトしたところで、飯田からお呼びがかかった。
三人が立ち去る背中を眺めながら。
は一人、呟いた。









『……神話に出てくるような人間は、洗濯なんてしないでしょ』








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