• テキストサイズ

イカロスの翼【ヒロアカ】

第9章 遠い憧れ




せっかく、彼が好きそうな鳥料理の店へ来たのに。
なぜだろう。
彼は公園を出てからずっと、ご機嫌ナナメだ。
何か失礼なことをしてしまっただろうか。


『…ホークス、私何かした?』
「別に」


不貞腐れた顔で、唐揚げを頬張る彼。
「仕事で関東まで行くから会おう」と言われていたのに、公園で私を待っていたのは、非番スタイルの私服姿に身を包んだ彼だった。
日帰りの仕事ではなかったのだろうか。
なんにせよ、久しぶりに会うことができてよかった。


『そう。よくわからないけどごめん』
「……べつに、関東に行ってから、急に薄情になったキミに怒ってるわけじゃないからぁー」
『…棒読み。薄情?』
「連絡はいつも俺からで、キミは電話に出てもすぐに切る。寂しいとか会いたいとかそういうことも一切ない。あれだけ毎日一緒にいたのに」
『連絡しても忙しいでしょう。電話を長く続けるのも、気が引けるし。会いたいとか…言ったら困らせるだろうし。ホークスは、みんなのホークスだから』


独り占めなんかできないよ。
そう言うと。


「……みんなの、ねぇ…」


彼は至極不服そうに目を細めた。
その表情が気にかかり、私がまた口を開こうとした時。
個室のテーブル向かいに座っていた彼が、食べ物を箸で掴み、腕を伸ばして、私の口に運んできた。
私がそれをありがたく戴いたのを見て。
ホークスが「あー」と口を開けた。
私は手近な焼き鳥を一本手に持って、彼の口へと運んだ。
もぐもぐと、満足げに咀嚼し続けるホークスを眺めて。
私はとても幸せな気持ちに浸っていた。






















食事を終えた帰り道。
ホークスは私を抱き抱えて、雄英の門まで送ってくれた。
じゃあ、また。
そう言って、地面へと足を下ろし、彼から離れようとした私の背を。
引き止めるように、彼が強く抱きしめた。


「」


耳元で囁かれた声に。
呼吸を忘れた。


「おやすみ」


ホークスは、艶やかな声でそれだけを言うと。
私に触れていた腕を、ゆっくりと話した。
驚いて、黙りこくっていた私は、一言。
『今日はありがとう』とお礼を述べた。
すると、彼は。


「気にせんで良か!」


と、気の良い返事を返してくれて。
こうも言った。




「でも絶対」





「他の男の前では泣かんって約束して」





/ 366ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp