第47章 後ろの正面だあれ
ほんの数分前。
群訝山荘より、80キロ離れた蛇腔病院。
エンデヴァー率いるプロヒーロー達が、敵連合のパトロンとなっていた闇医者を捕縛し、隠されていたハイエンド能無達との戦闘を開始していた。
戦況は圧倒的に有利、そのはずだった。
未だ仮死状態の死柄木を確保し、研究施設を破壊したにも関わらず。
突如として死柄木が目覚め、個性を行使した。
寝覚めの一振り。
その攻撃で、死柄木は病院周辺一帯を塵と化した。
「エンデヴァー!リューキュウ!!誰か!!状況を伝えろ!!」
混乱する現場で。
プロヒーロー達は瓦礫の崩壊に巻き込まれまいと、飛べるものは空中に後退した。
そして、後方。
近隣住民を避難させていたインターン生達も巻き込まれ、被害を受けていた。
「走って!!」
「全員走らせろ!!」
「みんな逃げて!!!」
蛇腔病院跡地。
死柄木が仲間の到着を待ち、眠い目を擦って、あくびをした。
そんな彼の視界に、一人のプロヒーローが飛び込んできた。
「死柄木!!!」
「寝起きに早々No.1かよ」
高熱の炎幕に死柄木が焼き尽くされる。
焼いたそばから再生する死柄木の皮膚を見て、エンデヴァーが通信機を起動させた。
「ーーー全体通信!!こちらエンデヴァー!!病院跡地にて死柄木と交戦中!!地に触れずとも動ける者はすぐに包囲網をーーー」
死柄木の手に掴まれないように、エンデヴァーが応戦する。
オールフォーワンから受け取った他の個性を行使し、死柄木がエンデヴァーを吹き飛ばした。
「…先生が溜め込んでた個性…生まれつき備わっていたような感覚だ。この万能感……なのに、なんだ。満ち足りない」
死柄木の中にあるオールフォーワンが、ずっと騒いでいる。
「ワン・フォー・オールを」
「ワンフォーオール?」
「あ!?ワン・フォー、なに!?とりあえずアシスト向かう!!」
突如として、住民の避難区域が前線地帯へと様変わりした街の一角。
エンデヴァーのサイドキック、バーニンが通信で聞いた音声を言葉に乗せた。
〈避難先に向かってる!!〉
〈戦闘区域を拡大しろ、街の外にも避難命令を!!〉