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イカロスの翼【ヒロアカ】

第46章 荼毘に伏す




行き場が無かった。
帰る家もなければ。
行きたい場所もない。
ただ、ただ。
行く宛もなく、歩き続けた。
歩いて。歩いて。
一つの空き家にたどり着いた。


「ゲホッ……!……はっ……!」


自分の身体の限界が近いことは、目覚めた時から知っていた。
エンデヴァーへの怨嗟の念で、無理やりに身体を動かして延命していた皺寄せがドッと押し寄せてきた。
人の気配がしない空き家の玄関で。
俺は吐血して、倒れ伏した。










ーーー死にたくない









ーーー死んでなんか、やるもんか












俺には、目的があったから。
死ぬわけにはいかなかった。
俺が行く宛もなく、空き家で倒れ伏してから。
数分も経たず。
誰かが外から入ってきた。
ソイツは血を吐いて倒れている俺を家の中まで引きずると、黙って毛布を体にかけてきた。












敵意も、好意も感じられない。
ただ、義務的に。
慣れたように、俺を介抱するその少女の姿を盗み見て。
俺は。


「ーーー触ん、な…!!」


ただ、荒い言葉を投げつけた。
なのに。
お前は。
そんなことは気に留めることもなく、俺が自分で動けるようになるまで、その家に置いてくれた。















丸太小屋のようなワンルーム。
ボロボロのカーテンで唯一の光源の窓を閉め切って。
暖炉の火で光を取り入れて、お前は生活をしていた。
何を頼んだわけでもないのに。
お前は、ベッドを占領したまま動けない俺に食事を与えた。
俺が動けるようになってからも。
無駄に部屋のスペースを占領している俺に、出ていけ、とは言わなかった。


『おはよ』


『行ってきます』


『ただいま』


お前が俺に話しかけるのは、その言葉だけ。
きっと、俺が。
話しかけるな、と暗に態度で訴えている空気感を、読み取っていたんだと思う。


さすがに、体調が落ち着いている間は、このボロ屋唯一のベッドを占領している気にもなれず。
地面の隅で転がって眠った。
雨風凌げるだけ、随分恵まれていたと、後になって思った。
それなのにお前は。
俺がずっと滞在するつもりだと思ったのか、ある日毛布を買ってきて、俺の寝床のスペースに置いた。


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